腎性貧血の最新治療「HIF-PH阻害薬」 ~もう注射は必要ない?~

腎性貧血とは ~エリスロポエチンと腎不全~

腎臓には、エリスロポエチンと呼ばれる「赤血球」を作るように促すホルモンを分泌する機能があります。

腎不全になると、そのエリスロポエチンが不足して、貧血が起きます。

この貧血を腎性貧血(じんせいひんけつ)と呼びます。

腎性貧血は単純に貧血になるだけでなく、心不全の原因となったり、腎機能障害を進行させます。

(CKD診療ガイド2012)

上の図のように「貧血」、「心血管病」、「腎臓病」は密接に関与し合っており、「心腎貧血症候群」と呼ばれています。

腎性貧血の治療

腎性貧血の治療は、腎機能を保護したり、腎臓病で多い心血管病を予防するために必ず行うべき治療です。

20年ほど前までは、貧血が起きた患者さんに対して輸血を行っていました。しかし、輸血を頻回に行うことで心不全や肝臓の障害など様々な合併症が起きていました。

20年ほど前に、ESA製剤という注射薬を約4-6週間に1回の頻度で注射して、不足した「エリスロポエチン」を補充する治療法が開発されました。

このエリスロポエチンで腎性貧血の治療は劇的な進歩を遂げ、腎臓病の患者さんの予後は大きく改善するようになりました。

(CKD診療ガイド2009)

様々な研究を重ねて、現在ではHb(ヘモグロビン)値を11-13g/dlにすることを目標として治療するのが望ましいとされています。

ESA製剤の課題

腎性貧血の治療を劇的に進歩させたESA製剤ですが、いくつか課題も出てきました。

特に、ESA製剤を使っても中々貧血が改善しない「ESA抵抗性の腎性貧血」がみられるようになりました。

このESA抵抗性の腎性貧血がある患者さんでは、生命予後の低下も報告があり対応方法が模索されていました。

また、ESA製剤が注射であることによる患者さんの痛みがあること、1カ月に1度は受診しなければならないこと、開業のクリニックで中々ESA製剤を打つことができないなどの側面もあり、中々腎性貧血を治療することが出来ないという課題もありました。

HIF-PH阻害薬とは

HIF-PH阻害薬とは、エリスロポエチンそのものを補充するのはではなく、腎臓からのエリスロポエチンの分泌の更新することで腎性貧血の治療を行います。

あくまでイメージですが、マラソン選手が高地トレーニングを行うのと似たようなメカニズムで、低酸素の状態でも能力が発揮できるようにします。

また、HIF-PH阻害薬には体の鉄の利用の効率をよくする効果もあり、慢性炎症が身体の中に起きている患者さんの貧血の治療としても期待されています。

HIF-PH阻害薬の副作用・注意点

HIF-PH阻害薬の副作用・注意点として主なものとしては以下の3つがあります。

  • 悪性腫瘍への影響
  • 網膜への影響
  • 鉄への影響

HIF-PH阻害薬のメカニズムから悪性腫瘍、網膜症への影響が懸念されていました。

現段階で、この薬を使用したことによる悪性腫瘍・網膜への影響は報告されていませんが、長期使用での影響はまだ分かっていない部分もあります。

そのため使用する場合は、定期的に検査をして合併症が起きていないかを調べます。

またHIF-PH阻害薬には、鉄の利用効率を上げる効果がありますが、一方で鉄が不足することがあるので適宜鉄の評価は必要です。更に急激に鉄の利用効率が良くなり、造血が過剰に進行する可能性もあります。

個人的な治療方針

まだ使用実績も浅い「HIF-PH阻害薬」ですが、メリットも多いため個人的にこのような患者さんには検討していこうと思っています。(飲み薬なのも魅力的ですね)

  • 重症な糖尿病がない
  • 悪性腫瘍がない
  • その他の臓器(心臓・脳など)に合併症はない
  • ESA製剤の効き目が微妙

また、これは全くエビデンスはありませんが、薬のメカニズムからすると尿細管・間質と呼ばれる個所の障害が予想されるときの方が印象として効果がでるのかなぁなんて思っています。(今後キャッチアップしていきたいと思います)

もっと詳しく知りたい方は、詳しく知りたい方用のページも作成したのでご参照ください。

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